ひたちなか市・虎塚古墳

あるのは昔から知っていたが何となく遠い存在だと感じていたのがこの虎塚古墳。

なんでも古墳があるのは江戸時代から知られていたのだが石室内に壁画が発見されたのは自分が生まれた年と同じ昭和48年とのこと。

高校の日本史の教科書になんかそれらしきことが書いてあったのを薄ぼんやり記憶しているのだが何せ20年以上も前のことゆえ、記憶違いだったらご容赦頂きたい。ちなみに山川出版社の教科書ね。

さて、虎塚古墳を調べようとひたちなか市のホームページを見ると、春と秋に石室の壁画を公開しているらしく、今年秋の公開は11月1日から4日との計8日間。

なぬっ、本日は10月30日、僥倖っ、まるで計ったかのような偶然に驚き、11月4日に見学に行くことにする。

てか、休館日(?)があるにせよ、毎日見られるわけじゃないんだな。

そして11月4日当日、同じく見たことがないという親父とおふくろを連れ立って見に行ってきましたが、年に数回しか公開されないというのに閑散としたこのお寒い状況、見る側からすれば観光地に有りがちな芋洗い状態とは違い、有り難いといえば有り難いが正直これってどうなのという思いもなきにしもあらずだったりする。

top_asa_pict01石室入口、舌を出してる間抜けな鳥の顔のように見える

だいたい普通なら『虎塚古墳壁画11月1日から4日公開中、土偶ちゃんも待ってるよ!』なんてダメなマスコットキャラ入りの捨て看板とか横断幕なんかを親の仇のようにこれでもかっていうぐらい歩道橋や道路にかがげて宣伝してるはずじゃん、ここに来る途中一個もそんなもん見なかったし、くだらない催しもんでもわりと平気で放送するNHKローカルですら見なかった(見そびれた可能性もあるが)、ひたちなか市本当にやる気あんのかよなどと、うっすらうらぶれた気分になったのだが・・・。

まあよい、古墳入り口にある受け付け所で150円のチケットを購入し、古墳に向かうと石室内は狭く、大勢では入れないため、4、5人ずつの入室になり、それまでは外で待たされることになり、その間、市の職員と思しき人が古墳の歴史や発見の経緯などを話してくれる(自分達の行った日がたまたまそうなのか、公開日はいつもそうしているのかは不明)。

散々うんちくを聞かされた挙げ句、「豪族らしいんですけど、結局誰のお墓なのか分からないんですけどね、あはははっ」と豪快に笑う始末でね・・・。

「・・・・・・・・」(一同)

さて、20分程待ちましたか、やっと自分達の番になり石室に入るのだが金属性の銀行の金庫にあるような凄い入り口の扉に圧倒される。

「いったいこの扉いくらすんだよ?」

ま、夜間、暴走族とかに侵入されて、『愛羅武勇』とか『黒田参上!』なんてスプレーで悪戯書きを書かれたら市の観光課の部課長クラスは全員クビが吹っ飛ぶ、厳重に守りを固めるのは当然か、と、どうでもいいこと考えつつ、進行方向に進むと、ぬおーーーーっ、ガラス張りの向こう側にあの有名な壁画がっ!!

top_asa_pict01※写真撮影不可の為、写真はひたちなか市HPより

ここでも中に待機している職員があれこれ説明をしてくれてるのだがそんなことはどうでもいい、これには考古学に興味のない自分でも正直感動した。

何ていうのかな、月並みかもしれんけどね、悠久の歴史ロマンみたいなもんが感じられてさ、手塚治虫の火の鳥を読んでいるような不思議な気持ちになったもん。「You Carry Us On Your Silver Wings To The Far Reaches Of The Universe 愛したら、火の鳥、時を越えて、めぐり逢う~♪」、てかぁ(by 渡辺典子、懐かしすぎ)。

普段から旅行に行きまくっているため、めったなことでは感動しなくなっている親父やおふくろですらも、壁画を見て、おおーっとため息を洩らしていた。

なんでもこの石室自体、恐らくは1300年ぐらい前のものらしいんだけど、発見当時、遺骨も同時に見つかったんだって。石棺だから遺骨があるのはまあ当たり前っちゃ当たり前だが人の骨も1300年も経つと、風化してさらさらの粉になってしまい、見つかったときは白い骨粉が人型になっていたとのことである。

top_asa_pict01※頭の中に浮かんだシーン、ごめん…

つーことは何かい、殺人事件現場に書いてあるチョークで書いた人型みたいなもんかと思ったのは俺だけではあるまい。その瞬間、火サスのチャンチャンチャーンというオープニングのテーマ曲が頭の中で流れ、一介の編集者でしかない片平なぎさが崖の上で容疑者を説得する姿が浮かんだ。あんたは刑事じゃねぇのに事件に首突っ込みすぎっ、ごめん、名もなき豪族・・・。で、その骨粉を丁寧に拾い集め、故人の意志を尊重し、粉は白い陶器に納められて今も石室内部に安置されている。

そして出てくるのだがこの間、凡そ5分、5分と聞くと短いような気もするが狭い上に巨大な石に囲まれているため、圧迫感が半端なく、自分的には長くもなし短くもなし、ちょうどいい時間按配に感じられた。冗談抜きで閉所恐怖症の人間だったら泣きだすと思うぞ。

はじめはなんでもっと壁画をアピールして観光客を集めねぇんだよと思ったが見終わって考えが少し変わったな。ここってね、土産物屋があるわけでなし、併設してある博物館があるだけでよくも悪くも古墳があるだけなの。古墳を作った当事者からすれば単に故人の墓を作っただけに過ぎず、後々観光地にされようなんては夢にも思ってないから、当然なんだけど、それを無理矢理町おこしと称して古墳饅頭だとか、古墳型をしたキーホルダーを売り出そうっていうのはなんか違う気がするのだ。茨城観光ガイドという割りには矛盾してしまうがここは考古学ファンがひっそりと行くことに意味があるような気がしてならない。

いちご狩りかなんかのついでに農協のジジババ団体が観光バスでぞろぞろ寄られたところで、トイレ休憩場になるのが関の山でね、墓に眠る当事者にしたらそんなんいい迷惑だろうよ。

だから閑散としているぐらいがちょうどいいと思ったね。

二時間も三時間も待たされて、考古学に興味がない人が壁画を見たされたって、出てくるのは、「なんだこれだけ?」という心ない言葉ぐらいなもんだろ、そうなりゃ眠る故人だって、余計なお世話だ、バカヤロー、人の墓勝手に掘り起こしといて貴様らはいったい何様のつもりだぁ、この野郎って話じゃない。

ただ、決して否定しているわけではないぞ。壁画を見て感動したのは事実だから。

実際、自分の後ろに並んでいた都内からわざわざ来たという考古学ファンの初老の夫婦はたいそう喜んでいた(九州とか関西まで見に行くんだって)。もうそれがすべて。興味がある人が行って、じんわり感動して帰ってくるのが正しい見学の仕方のような気がするな。だからまったく宣伝をしていないひたちなか市の方針も意図してるのかどうかは別にしてありっちゃありだす。
 

考古学が好きなら ★★★★☆
お手軽度 ★★★★☆
混雑が嫌いな人向け度 ★★★★★

 

所在地
ひたちなか市中根字指渋(さしぶ)3494-1
問い合わせ先029-276-831
利用可能時間HP参照
料金大人150円(団体120円)、小中学生80円(団体60円)
休日HP参照
駐車場あり(無料)
ホームページhttp://www.city.hitachinaka.ibaraki.jp

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